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【会読・読書ノート】生物から見た世界/ヤーコブ・フォン・ユクスキュル,ゲオルク・クリサート(著).日高敏隆,野田保之(訳)/思索社【第一部・四章】

はじめに

この本(生物から見た世界/ユクスキュル)は、大変素晴らしい本だと思うのですが、私の力が及ばず、現状、私はきちんとした深い読みができていません。理解を深めるために、会読を進めていこうと思います。「インターネットを使えるなら、会読の要約(レジュメ)はぜひともネット上に公開すべきだ(独学大全・p.192)」の言葉に基いて、こちらにアップしていきます。ご示唆・ツッコミは大歓迎です。(レジュメ作成には、昭和48年6月30日に思索社から発行された版を用いています。現在岩波文庫から出ている新版とは、ページ数や訳語が異なる、第二部やアドルフ・ポルトマンによる解説が存在する、等の差異があります)

 

第一部


〈四章〉簡単な環境世界


【要約】
たったひとつの知覚標識しかもたないような、非常に単純な環境世界では、空間と時間は意味をもたない。そもそも、空間と時間は数多くの知覚標識の区別にとって役に立つものであり、主体に対して直接的な利益はもたらさない。


例えば、ゾウリムシ(Paramaecium)においては、その環境世界では、常に同一の知覚標識だけしか取り上げない(その環境にはじつに様々なものが存在するにも関わらず)。


ゾウリムシに何らかの刺激を与えると、ゾウリムシは逃避運動をおこす。後方へ退き、向きを変えて、さらに前進運動をはじめることで、障害物から遠ざかる。


この一連の動きにより、「物にぶつかった」という知覚標識は消去される。これはぶつかったものがどのようなものであれ、同一の知覚標識であり、常に同一の作用標識によって消去されているといえる。


唯一、ゾウリムシに刺激を与えないのは、餌である腐敗バクテリアだ。腐敗バクテリアにぶつかると、ゾウリムシは静止する。


この事実は、自然はただひとつの機能環を用いて、生命をいかに目的的に作り上げることができるかを示す。

 


多細胞の動物でも、ただひとつの機能環で生きているものがいる。根口クラゲ(Rhizostcma)は、一種の泳ぐポンプのような形状で成っている。


細かいプランクトンを体全体で取り入れ、プランクトンを濾しとったあと、水だけを同じ口から吐き出す。この時、水を吐き出す動きにより、クラゲは前進する。


同時に、水中にある酸素を取り入れ、全身に巡らすることもできる。根口クラゲはたったひとつの動作で、3つの重要な機能を果たすことができる。


これは、クラゲの傘のふちにある器官(鐘のような形をしている)が、振動のたびごとに神経節を打ち、指令を出し続けていることによって起こっている。


根口クラゲはこの自己刺激→運動→自己刺激を、無限に繰り返している。そして、根口クラゲの環境世界においては、他の刺激は一切遮断されている。


すなわち、根口クラゲの環境世界には、生命のリズムを支配するいつも変わりない鐘の音が響いている。

 


根口クラゲのような、機能環がただひとつしかない場合には、反射動物といってもいいだろう。


他のクラゲでも、反射動物と呼んで差し支えないものがいる。このような動物は、反射弓が独立に活動し、中枢位からは何らの指図も受けていない。


このような、外部の器官が完全な反射弓を有している場合は、それを「反射個体(Reflexperson)」と呼ぶ。

 


ウニは、このような反射個体をたくさん備えて、全身に分布させている。そして、中枢からの指令なしに、おのおのが独自に反射機能を遂行する。


ウニはたくさんのトゲを持っており、皮膚に刺激を与える対象が近づくと、このトゲを立てる。このトゲの他に、柔らかく長い吸盤状の足(管足)があり、物をよじ登る時に使う。また、多くのウニは四種類のはさみ状のトゲ(叉棘)をもっている。これら全てが全く独立した反射個体である。


独立して動いているとはいえ、ウニの身体では、柔らかな管足が、鋭い叉棘に襲われる、ということは起こらない。したがって、これを「反射共和国(Reflexrepublik)」という名で呼ぶことができる。


この町の平和は、中枢位からの指令によるものではない。それは、アウトデルミン(Autodermin)(皮膚自己物質)という物質の存在により保たれる。


アウトデルミンは皮膚一面にごく低濃度に存在している。アウトデルミンは、濃度が高くなると反射個体の受容器を麻痺させる。このことから、同一主体の二つの皮膚面が接触することにより、アウトデルミンの濃度が高まり、反射が起きることを抑制する。


多数の反射個体をもつ反射共和国の場合は、機能環がバラバラに働くことから、これらの知覚標識は相互に無関係である。

 


一方で、比較としてダニを考える。前述のように、ダニの生命表現は、本質的に3つの反射から成り立っている。しかし、機能環に共通の知覚器官があることから、一つの統一体を作り上げている可能性がある。

 


このような可能性はウニにはない。圧迫刺激と知覚標識は完全に独立している。そのため、ウニは影に対してトゲを動かして反応する際、雲にも船にも、本当の敵である魚に対しても行う。

 

 


【感想】
・やっぱりユクスキュルはすごい……このあたりの分野は、神経生理学?とか、そのあたりの話なんじゃないだろうか。本当に(今で言うところの)広い分野の話を考えているんだなあ……。「生き物をとらえる・理解する」って、こういうことなのかな……。


・根口クラゲの最終文、要約できなかった!そのままもってきてしまった!あまりに素敵な表現だったので!「鐘の音だけが鳴り響く永遠の静寂」って……すごく……すごくイメージを喚起させる!


・この分野、今はどういう知見が得られているのかなー。